長井秀友

長井秀友
NAGAI Hidetomo
高橋研究室・助教

私は離散可積分系と呼ばれる種類の非線形方程式の研究を行っています。研究を通じて最近強く感じるのは、数学と物理あるいはその他の科学との境界は実はあいまいだということです。大学の授業では物理法則は数式で表現できるけれども物理は物理で数学は数学、というふうにそれぞれの専門があって、お互い遠い存在だと思っていました。

ところが研究室で、波の運動を表すコルテヴェグ・ド・フリース方程式や交通渋滞を再現するバーガーズ・セルオートマトンを学び、その解のふるまいの非常に美しい数学的構造を知り、同時に解が現象を見事に再現するのを知るにつれ、科学の分野としての境界があいまいになってきました。よく考えてみると、実数や極限などという数学上の概念を厳密に再現している現実の対象はなく、それらは人間の認識の道具にすぎません。しかし、そのような概念があるからこそ現実を論理的に把握することができるのだと思います。このことから数理モデルの大切がわかり、自分が今研究している数式をいつか現実の現象の中に発見できたらと期待してします。