柳澤優香

「精度の保証された数値計算」を
通じて社会に貢献したい

柳澤優香
YANAGISAWA Yuka
大石研究室 博士2年
Q 応用数理の道を志したきっかけは?

大学を卒業後、大手IT企業でSEとして5年間働いていました。そこで求められたのは、簡単に言うと広範囲な知識とプロジェクトマネジメント能力でした。社会人として多くのことを学べたことは、私にとって貴重な経験でしたが、SEという職種で将来の自分の姿を思い描くことが出来なくなってしまったのです。

小さい頃から数学が大好きで、数学に関わる職業に就きたい、という思いがありました。
そこで、自分の原点である数学をもう一度しっかり学び直し、本当に目指したいことを探すために、大学院に進学することに決めました。母校である東京女子大学の大学院修士過程に戻り、博士課程から早稲田の数学応用数理専攻に進学しました。早稲田では他大学からの学生もすんなり受け入れてくれる土壌があり、やりたいことを尊重してくれました。そういった柔軟な雰囲気は早稲田ならではだと思います。

研究に求められるのは「根気」

Q 研究内容を教えてください

私が研究テーマとしている精度保証付き数値計算は、コンピュータの数値計算結果が厳密解に対してどれくらいの誤差を持つのかを定量的に計算する方法です。コンピュータで計算した結果は正しいと思っている方が多いかと思いますが、必ずしもそうではなく誤差がある場合があるのです。このことを知ったときには驚きました。さらに、精度保証付き数値計算によって計算結果が何桁まで正しいか、問題の解が存在するかなどを示す事によって、数値計算結果を社会の様々な分野に応用できることも分かりました。

その中でも、現在私が興味を持って取り組んでいるのが、悪条件な線形問題です。線形問題をコンピュータで解く場合、その計算結果は有限桁の数に収められるため、誤差が生じてしまいます。さらに悪条件な線形問題は、その数値計算結果は厳密解と1桁も合っていないこともあるという解きにくい問題です。そのような問題について高速に精度の良い数値計算結果を得る解法を考えています。各計算で生じる誤差を細かく解析し、数値実験を何度も繰り返し確認するという、根気のいる作業です。途中で気が滅入ることもありますが、すべてを乗り越えたときには、その喜びで辛さも全て吹き飛んでしまいます。結局、次はもっと難しい問題に取り組んでみようという気になっているのです。そんな時にこの研究が本当に好きなんだな、と実感しますね。

しかし、このような解法は計算量が大きく手間がかかると考えられていて、スーパーコンピューターなどを扱う専門家の間では敬遠されがちで、良さをあまり理解してくれていない印象があります。ですから、さらに研究をすすめて、私の研究を多くの人に知ってもらいたいです。そして少しでも社会に貢献できたら、と考えています。